特定技能の制度に関する基本方針にのっとって、人材確保が困難な分野として14の特定産業分野 が定められました。
今回は、その14分野の中のひとつ漁業分野について。

漁業分野の運用方針

特定技能外国人を漁業分野へ受け入れる趣旨と目的

深刻化する漁業分野の人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした現場に即戦力として就労する外国人を受け入れることで、この分野の存続・発展を図り、日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することが挙げられています。

なお、この分野が深刻な人手不足であることに変わりありませんが、近年では高性能な漁船の開発や衛星情報の活用による魚群の迅速な把握、AIを活用した漁場探査の効率化等といった最先端技術の開発が進み、過去5年間で漁業者1人当たりの生産量が25.1トンから27.2トンへと増加し、一定の取組の成果が確認されている側面もあります。

漁業分野の人手不足の状況

漁業分野における就業者は、平成10年には27万7,000人でしたが、平成29年には15万3,000人までに減少しおよそ半減している状況です。
また、漁業分野の有効求人倍率は、漁船員 2.52 倍(船員職業安定年報)、水産養殖作業員 2.08 倍(職業安定業務統計)となっている他、雇われ就業者も3年間で約1割減少して、漁業分野も他の分野と同じように深刻な人手不足となっている分野です。

有効求人倍率とは
簡単にいうと、1より大きくなると仕事の数の方が多く、働き手が足りない状況。
1を切ると、求職者の方が多く、仕事探しが困難な状況。

漁業分野への人材確保の必要性

漁業分野の65歳以上の高齢労働者が占める割合は高く、個人で漁業を営む事業者は別として高齢労働者が順次引退していくことを考えると毎年1,000人の新規雇われ就業者を維持しても、今後も人手不足が加速するとされています。
農業が国の基礎であるのと同じように島国である日本にとって、漁業も国の基本的施策として極めて重要な分野です。
このため、日本の経済・社会基盤を阻害しないよう「特定技能」により外国人を受け入れることが、国民のニーズに応じた水産物を安定的に供給確保していくためには必要不可欠であるといえます。

受入れ見込数

漁業分野における1号特定技能外国人の向こう5年間の受入れ見込数は最大9,000人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用するとされています。
向こう5年間で2万人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れでは5年間で最大9,000人という数値なので決して過大な受入れ数とはいえないでしょう。

見込み数を超えそうな場合は

懸念される部分の一つですが、もしこの分野への受け入れ見込み数を超える状況となった場合は、入管法の規定により在留資格認定証明書の交付の停止措置が取られる予定です。
そして同規定には停止措置がとられても、再び人材確保の必要性が生じた場合には、受け入れ再開の措置がとられることも定められています。

漁業分野に求められる人材基準

漁業分野において特定技能として受け入れられる外国人には、技能試験と日本語試験に合格することが求められます。
また、漁業分野の第2号技能実習を修了した者も必要な技能水準と日本語能力水準を満たしているものとして取り扱うとされています。

1.技能水準(試験区分)

ア「漁業技能測定試験(仮称)(漁業)」

イ「漁業技能測定試験(仮称)(養殖業)」

2.日本語能力水準

「日本語能力判定テスト(仮称)」

又は

「日本語能力試験(N4以上)」

その他、漁業分野の運用方針に関する重要事項

1号特定技能外国人が従事する業務

1号特定技能外国人が従事する業務区分は、上記の試験区分に対応し、それぞれ以下のとおりです。

ア  「漁業技能測定試験(仮称)(漁業)」の場合
漁業に関する漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等

イ「漁業技能測定試験(仮称)(養殖業)」の場合
養殖業に関する養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等

特定技能所属機関(所属機関)に対して特に課す条件
  1. 労働者派遣形態(船員派遣形態を含む。以下同じ。)の場合、特定技能所属機関となる労働者派遣事業者(船員派遣事業者を含む。以下同じ。)は、地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合若しくは漁業協同組合連合会その他漁業に関連する業務を行っている者が関与するものに限る。
  2. 特定技能所属機関は、「漁業特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。) の構成員になること。
  3. 特定技能所属機関は、協議会において協議が調った措置を講じること。
  4. 特定技能所属機関及び派遣先事業者は、協議会及びその構成員に対し、必要な協力を行うこと。
  5. 漁業分野の外国人を受け入れる特定技能所属機関が登録支援機関に支援計画の全部又は一部の実施を委託するに当たっては、漁業分野に固有の基準に適合している登録支援機関に限る。
特定技能外国人の雇用形態

<雇用形態>
漁業分野の事業者を特定技能所属機関とする直接雇用形態及び労働者派遣事業者(上記(2)アに定める者に限る。)を特定技能所属機関として外国人を漁業分野の事業者に派遣する労働者派遣形態とする。

<労働者派遣形態により受け入れる必要性>
漁業分野においては、同じ地域であっても、対象魚種や漁法等によって繁忙期・閑散期の時期が異なるとともに、漁業分野の事業者の多くが零細で半島地域や離島地域等に存在していること等の特性があり、地域内における業務の繁閑を踏まえた労働力の融通、雇用・支援の一元化といった漁業現場のニーズに対応するため、漁業分野の事業者による直接雇用形態に加えて、労働者派遣形態により1号特定技能外国人を受け入れることが不可欠である。

治安への影響を踏まえて講じる措置

農水省は、基本方針を踏まえつつ、治安上の問題となりそうな事項を把握するよう努め関係機関と適切に共有していくものとする。
また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがある場合は、基本方針を踏まえつつ、厚労省と関係機関が共同して所要の検討を行い、運用方針の変更を含め、必要な措置を講じるものとする。

特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中しないよう必要な措置を講じる

以上です。

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この記事を書いた人

SHINGO ITO
SHINGO ITO行政書士Office ITO 代表
IT業界で15年目リストラに遭遇し、行政書士資格を取得。
2016年,行政書士Office ITOを開設し、外国人ビザ申請に特化。
銀座を拠点に就労ビザ・配偶者ビザ・永住ビザなど実績10年。
趣味はおいしいパスタ料理(自称)と断捨離。家は小遣い制。
[ 所属団体 ]
東京行政書士会(会員番号 第11086号)
日本行政書士会連合会(登録番号 第16081519号)
[ 資格 ]
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Certified Immigration Procedures Agent(入管申請取次届出行政書士)

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