先日、政府から発表された外国人材受け入れ拡大案では、新しい在留資格「特定技能」が設置されることになりました。
今までは、単純労働以外の高度な職種に限られていた外国人労働者の受け入れを他の業種、職種にも広げられるようになる公算です。
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「特定技能」と「技能実習」は別物
上記概要には色々書かれていますが、
1.受入れ対象分野
- 人材を確保することが困難な状況にあるため,外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野
人手不足でどうにもならない産業分野については外国人を確保して上手いことやっていこう。
って意味ですね。
「技能実習」の建前とは全く違う本音が全面に出されています。
「特定技能」という名前から、今までの「技能実習」と同じようなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、「特定技能」と「技能実習」は全く違う在留資格(ビザ)です。
「技能実習」には、国際協力推進のために日本の技能、技術、知識を伝える。という国際貢献の建前が前提であるため、原則単純作業などには従事できないものとされています。
(現実は違いますけど)
それに対して、今回の「特定技能」の対象となる外国人に求められるのは
2.受入れ対象者
- 相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と,同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」を新設する。
- ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の日本語能力を有することが基本
まず、「特定技能」という枠を設けつつ、その中を各スキルの高低に応じて2つに大別して運用。そしてそのいずれも「ある程度の日常会話が必須」ということ。
すでに一定程度の技能、技術、知識を習得している外国人であれば、これまで日本では認められなかった新たな産業分野でも就労可能となる在留資格になります。
そして、その気になる新たな産業分野とは
外食業、農業、建設業、介護、ビルクリーニング、漁業、飲食料品製造、素形材産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊業
「特定技能2」の場合
建設業、造船業・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊業
今の時点では、この全14業種は検討中の段階ですが、恐らく大きな変更はないかと思われます。
この分野をざっと見ていただいてどうでしょうか。
個人的には、外食産業、農業、建設業、漁業、宿泊業、ビルクリーニングというのは、この中でも特に人材が深刻に不足している分野だと思うので、この在留資格が正式に決まれば、日本社会の労働力に対する非常に大きな転換期となることは間違いありません。
「特定技能」1号と2号の違いとは?
「特定技能」には1号と2号があり、それぞれ業種・分野が違ったり、労働者の技能、技術、知識の熟練度により1号と2号の違いがあることは書きましたが、違いはそれだけではありません。
「特定技能」2号となれば、より優位な資格として認められ1号には無い本人以外に家族の帯同が認められる他、永住申請が可能となることも検討されています。
※11/9追記
「永住申請が可能」との部分については、見直される可能性があるようです。
というのも、この在留資格による永住申請を認めると、永住申請者が大幅に増加する可能性があるため、この点については時期尚早との意見があるらしいのですが、それってどうなんでしょうね。
原則として引き続き10年以上日本に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
まだ確定していないので、何とも言えませんが、「特定技能」も就労資格でしょ。って感じです。
政府の基本方針と骨子案
そのほか、今回のあらたな在留資格「特定技能」に関する骨子案として、政府の基本方針が1~13まで公開されています。
あくまでも骨子案なので、具体的でないところもありますが、3については要チェックです。
3.「特定技能1号」の技能水準・日本語能力水準
- 技能水準は,受入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識又は経験を有することとし,業所管省庁が定める試験等によって確認する。
- 日本語能力水準は,ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ,受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定める試験等によって確認する。
- 技能実習2号を修了した者は,上記試験等を免除。
実際に「特定技能」をとるための指標を示す内容となります。
「特定技能」を取るにはどうすればいいのか?
「特定技能」で在留資格を取って働くことができれば、今よりもかなり制約が少なくなり、外国人労働者にとっても、雇用者側にとっても助かる可能性があります。
「特定技能」の在留資格をとる条件としては、まず外国人本人 に求められるものとして、各分野を所管する省庁が定める特定技能評価試験に合格したり、生活に支障がない程度の日本語能力を取得することが必要となります。
受入れ機関の基準 としては、以下のように定められています。
- 外国人と締結する契約は,報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため,所要の基準に適合することが必要
- 適格性に関する基準
・労働関係法令・社会保険関係法令の遵守
・欠格事由に該当しないこと等 - 支援体制に関する基準(特定技能1号外国人材の場合に限る)
・支援計画に基づき,適正な支援を行える能力・体制があること等
以上のように、本人の条件も受入れ機関の条件も現段階では明確にされていませんが、個人的にはハッキリ言って「特定技能」を得るための条件は決して易しいものでない印象です。
まあ、国の立場で考えてみれば無理もありません。
なぜなら、日本は長年、建前上は労働移民を認めない政策を続けており、安倍総理も国会では「いわゆる移民政策はとらない」と繰り返し主張されています。
ゆえに、そんな移民鎖国的な国策をずっと続けてきた日本が、今回のあらたな在留資格「特定技能」で今までにない数の外国人労働者を受け入れるしかない状況となった場合、真っ先に規定すべきは、やってくる外国人の質の担保とそれを受入れる機関による徹底した管理のはずです。
言い換えれば、
『人手が深刻な分野への外国人受入れをOKにはするけど、その代わり外国人には一定以上のレベルを求めるし、受入れ機関も受入れる以上は、業務面はもちろん、その他様々な生活面とかもしっかり管理する体制を整えてね、ヨロシク!』
ってことです。
確かに現状、外国人の多い地域に治安がよろしくない事実もあることや、国民の安全や国防といった面を考慮するとしょうがない部分でしょう。
特定技能評価試験とはどのような試験か?
特定技能評価試験は、まだ案の段階ですので詳細については正式には決まっていません。
しかし、報道などによると今のところ、日本語自体の試験と技能試験の2種類の試験が候補となっているようです。日本語能力検定が使用される可能性は高く、これは現在と変わりありません。
その他に、技能に関してはそれぞれの業界団体が実施している実技試験などを利用することが考えられているようです。
詳細については、まだ不確定のものが多いため今後も要チェックしていきます。
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この記事を書いた人

- 行政書士Office ITO 代表
-
IT業界で10年目リストラに遭遇し、行政書士資格を取得。
2016年行政書士Office ITOを開設し、外国人ビザ申請に特化。
銀座を拠点に就労ビザ・配偶者ビザ・永住ビザなど実績10年。
趣味はおいしいパスタ料理(自称)と断捨離。家は小遣い制。
[ 所属団体 ]
東京行政書士会(会員番号 第11086号)
日本行政書士会連合会(登録番号 第16081519号)
[ 資格 ]
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Certified Immigration Procedures Agent(入管申請取次)他
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