2023年4月21日、高度人材の招へい拡大のためあらたな制度が新設されました。
その名もJ-Skip(特別高度人材制度)

J-Skipとは

J-Skip(特別高度人材制度)とは、これまでの高度人材ポイント制とは別に学歴または職歴と年収が一定水準以上であれば、「高度専門職」ビザが得られるよう取得要件を拡大するものです。
これに該当する「高度専門職」は特別高度人材として認められ、現行よりも拡充された優遇措置を受けることができるようになります。

要するに今まで「高度専門職」になるには高度人材ポイントが70点以上必要だったところ、この制度でポイントは関係なく、学歴または職歴と年収だけにフォーカスした要件が設けられたという感じです。

J-Skipの要件は2種類

前提として、「高度専門職」には以下3つの活動パターン。

  1. 「高度専門職1号イ」
    本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
    例 : 大学の教授や研究者等
  2. 「高度専門職1号ロ」
    本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
    例 : 企業で新製品の開発等を行う者、国際弁護士等
  3. 「高度専門職1号ハ」
    本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動
    例 : グローバルな事業展開を行う企業等の経営者等

そして今回設けられた“特別高度人材”としての要件は、上記1~3ごとに以下のとおり。

1・2の活動パターンの場合は、以下いずれかに該当すればOK

・修士号以上取得かつ年収2,000万円以上
・従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上

3の活動パターンの場合は、以下該当すればOK

・事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上

以上。とてもシンプルな要件。

J-Skipの証明資料は?

学歴・職歴・年収を証明する資料は以下のとおり。

要件 特別高度人材の基準を証明する資料(基本例)
学歴 該当する学歴の卒業証明書及び学位取得の証明書
職歴 従事しようとする業務に従事した期間及び業務の内容を明らかにする資料
※ 所属していた機関作成のもの
年収

年収(契約機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額)を証する文書
年収(契約機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額)とは、(直前までの期間を含む。)過去の在留における年収ではなく、申請に係る高度専門職外国人としての活動に、本邦において、従事することにより受ける(予定)年収を意味します。

当然のことかもしれませんが、外国の所属機関から受ける報酬も対象になる点に魅力を感じます。

※ 入管への申請には、上記以外にも必要書類があります
※ 入管の審査過程では上記以外の資料を求められる場合もあります

拡充された優遇措置とは

特別高度人材には、既存の高度人材ポイント制による優遇措置よりも広範囲な優遇措置があります。

  1. 複合的な在留活動の許容
  2. 在留期間が5年
  3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和
  4. 配偶者の就労条件の拡大
  5. 親の帯同(一定の要件が必要)
  6. 家事使用人の帯同の条件が拡大(一定の要件が必要)
  7. 入国・在留手続きの優先処理
  8. 大規模空港等に設置されたプライオリティレーンの使用
  9. 「高度専門職2号」への移行が1年

※青文字が高度専門職1号(特別高度人材)にだけ認められる優遇措置

ざっくりまとめ

というわけで、今回のJ-Skipをざっくりいうと

  1. 高度人材ポイントが70点以上必要。という縛りがなくなった
  2. 「高度専門職1号イ」、「高度専門職1号ロ」への要件として次のいずれかに該当すればOKとなった
    ①修士号以上取得かつ年収2,000万円以上
    ②従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上
  3. 「高度専門職1号ハ」への要件として次のいずれかに該当すればOKとなった
    ①事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上
  4. 既存の優遇措置に追加のメリットが加えられた

個人的な感想

最後に個人的な感想としては、②従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上という点に大きな可能性を感じます。

なぜなら、これは実質的に年収だけを判断基準にしていますよね。

年収が2,000万円以上の人は実務経験が10年以上ある、ということも多いはず。世界には学歴や日本語能力が無くても年収2,000万円以上の人たちは本当にたくさんいるので、この改正によって、今後ますます世界の高度人材が日本で働きやすくなるのではと思う今日このごろ。

この記事を書いた人

SHINGO ITO
SHINGO ITO行政書士Office ITO 代表
IT業界で10年目リストラに遭遇し、行政書士資格を取得。
2016年行政書士Office ITOを開設し、外国人ビザ申請に特化。
銀座を拠点に就労ビザ・配偶者ビザ・永住ビザなど実績10年。
趣味はおいしいパスタ料理(自称)と断捨離。家は小遣い制。
[ 所属団体 ]
東京行政書士会(会員番号 第11086号)
日本行政書士会連合会(登録番号 第16081519号)
[ 資格 ]
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Certified Immigration Procedures Agent(入管申請取次)他

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