特定技能の制度に関する基本方針にのっとって、人材確保が困難な分野として14の特定産業分野 が定められました。
今回は、その14分野の中のひとつである産業機械製造業分野について。

産業機械製造業分野の運用方針

特定技能外国人を産業機械製造業分野へ受け入れる趣旨と目的

深刻化する産業機械製造業分野の人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした現場に即戦力として就労する外国人を受け入れることで、この分野の存続・発展を図り、日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することが挙げられています。

産業機械製造業分野というのは、素形材産業分野 と同じく日本の社会インフラ設備、その他幅広い産業へ工業製品を供給しており日本の製造業の根幹を担っています。

そもそも産業機械製造業分野とは

そもそも「産業機械製造業分野」ってどんな分野?って感じなんですが、その単語のままググっても正確な定義らしいものはありません。政府的にはおそらく「産業機械」「製造業」の分野をまとめて対象としたんだと思います。

「産業機械」とは
産業機械(さんぎょうきかい)は、機械の一種であり、化学工業、建設業などを含む産業現場で、人にとって苦痛、困難、不可能な作業を補助、代行するもの。産機(さんき)と略される。

「製造業」とは
原材料などを加工することによって製品を生産・提供する産業で、鉱業・建設業とともに第二次産業を構成する一大分野である。工業の中でもさらに重工業から軽工業までと幅広く、各国の産業構造によって異なる分布を見せ、概して経済活動において主要な位置付けとなる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

産業機械製造業分野への人材確保の必要性

世界的に工作機械やロボット等の産業機械に対する需要が高まる中、平成29年度の産業機械製造業では1万2,000人の人手不足となっており、同分野への需要拡大とそれに伴う労働力の需要拡大が続くと5年後には7万5,000人の人手不足が生じるとの推計もでています。

産業機械製造業分野に関連する職業分類における有効求人倍率(平成29年度)は2.89倍ですが、この分野に関連する金属プレス工は2.97倍金属溶接・溶断工は2.50倍プラスチック製品製造工は3.70倍となっている等、関連分野もあわせて軒並み深刻な人手不足の状況になっていることが分かります。

有効求人倍率とは
簡単にいうと、1より大きくなると仕事の数の方が多く、働き手が足りない状況。
1を切ると、求職者の方が多く、仕事探しが困難な状況。

しかも、前述のとおり産業機械製造業分野に対する需要が高まることが見込まれる一方で、人手不足が早急に改善できる見通しは立っていない状況にあります。

受入れ見込数

産業機械製造業分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大5,250人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用するとされています。

向こう5年間で7万5,000人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れでは、5年間で最大5,250人という数値なので決して過大な受入れ数とはいえないでしょう。

見込み数を超えそうな場合は

懸念される部分の一つですが、もしこの分野への受け入れ見込み数を超える状況となった場合は、入管法の規定により在留資格認定証明書の交付の停止措置が取られる予定です。
そして同規定には停止措置がとられても、再び人材確保の必要性が生じた場合には、受け入れ再開の措置がとられることも定められています。

産業機械製造業分野に求められる人材基準

産業機械製造業分野において特定技能として受け入れられる外国人には、技能試験と日本語試験に合格することが求められます。
※産業機械製造業の第2号技能実習を修了した者も要件を満たすとされています。

なお、素形材産業分野産業機械製造業分野電気・電子情報関連産業分野の3分野においては、製造現場で従事する業務の多くが共通していることから、技能水準及び評価方法等を統一し、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」として共通の評価試験を実施することも決まっています。

1.技能水準(試験区分)

製造分野特定技能1号評価試験(仮称)

項番a.試験区分b.業務区分
製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(鋳造)
鋳造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、溶かした金属を型に流し込み製品を製造する作業に従事)
2製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(鍛造)
鍛造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業に従事)
3製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(ダイカスト)
ダイカスト(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、溶融金属を金型に圧入して高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する作業に従事)
4製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(機械加工)
機械加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や切削工具を用いて金属材料等を加工する作業に従事)
5製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(金属プレス加工)
金属プレス加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞り等を行い成形する作業に従事)
6製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(鉄工)
鉄工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、鉄鋼材の加工、取付け、組立てを行う作業に従事)
7製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(工場板金)
工場板金(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事)
8製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(めっき)
めっき(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業に従事)
9製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(仕上げ)
仕上げ(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業に従事)
10製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(機械検査)
機械検査(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う作業に従事)
11製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(機械保全)
機械保全(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業に従事)
12製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(電子機器組立て)
電子機器組立て(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、電子機器の組立て及びこれに伴う修理を行う作業に従事)
13製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(電気機器組立て)
電気機器組立て(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、電気機器の組立てや、それに伴う電気系やメカニズム系の調整や検査を行う作業に従事)
14製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(プリント配線板製造)
プリント配線板製造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、半導体等の電子部品を配列・接続するためのプリント配線板を製造する作業に従事)
15製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(プラスチック成形)
プラスチック成形(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、プラスチックへ熱と圧力を加える又は冷却することにより所定の形に成形する作業に従事)
16製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(塗装)
塗装(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事)
17製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(溶接)
溶接(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、熱又は圧力若しくはその両者を加え部材を接合する作業に従事)
18製造分野特定技能1号評価試験(仮称)
(工業包装)
工業包装(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、工業製品を輸送用に包装する作業に従事)

2.日本語能力水準

「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

その他、産業機械製造業分野の運用方針に関する重要事項

1号特定技能外国人が従事する業務

1号特定技能外国人が従事する業務区分は、上記の製造分野特定技能1号評価試験(仮称)の区分に対応し、業務区分の欄に掲げる業務とする。

特定技能所属機関(所属機関)に対して特に課す条件
  1. 特定技能所属機関は、「製造業外国人材受入れ協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
  2. 特定技能所属機関は、協議会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告又は現地調査等その他に対し、必要な協力を行うこと。
特定技能外国人の雇用形態

原則直接雇用に限る。

治安への影響を踏まえて講じる措置

経産省は、基本方針を踏まえつつ、治安上の問題となりそうな事項を把握するよう努め関係機関と適切に共有していくものとする。

また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがある場合は、基本方針を踏まえつつ、厚労省と関係機関が共同して所要の検討を行い、運用方針の変更を含め、必要な措置を講じるものとする。

特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中しないよう必要な措置を講じる

以上です。

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About the author

SHINGO ITO
SHINGO ITO
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Immigration lawyer(入国管理局申請取次届出)
・Certified Skilled Worker of Financial Planning(2級FP技能士)
・Personal Information Protection Professional(個人情報保護士)
IT業界で10年間コーディネーターとして幅広く業務を担当。
2016年これまでに得た経験を活かすため行政書士に転身。
その後1年間の下積みを経て行政書士伊藤真吾事務所を開設。
趣味は、深夜の一人映画館と断捨離とバイク。家は小遣い制。
【Affiliation】
日本行政書士会連合会 登録番号 第16081519号
東京都行政書士会   会員番号 第11086号
【Other qualifications】
調理師免許
大型自動車免許
中型自動二輪免許

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