今回は「技能実習」についてざっくりと解説したいと思います。

「技能実習」とは

「技能実習」とはその名の通り、技能を実習するために来日した外国人技能実習生に与えられる在留資格のことです。

最近は、新型コロナウイルスの影響で雇用元の仕事がカットされ突然解雇されたり、勤務日数を減らされたりで技能実習生に関する負の報道が良く目につきます。
しかし以前から技能実習生に関する負の報道は定期的にでています。
・実習生による犯罪
・勤務先からの脱走
・勤務先からのパワハラやセクハラ
・勤務先からの給料未払いや減給
・突然の雇止め
・夢と希望をもって日本に来たものの、多額の借金を残して志半ばで帰国
等々

当然、全ての技能実習生を取り巻く環境が必ずしもこういった状況ばかりではありませんが、インパクトのある内容が多く他の在留資格で暮らす外国人と比べるとどうしても目立ったものとなっています。

現在、技能実習生として働く外国人の数は約41万人です。

その多くは真面目に働いている人ばかりです。
そして彼らの存在がいまや日本の労働市場に欠かすことのできない力となっていることは疑いようがありません。

では、なぜ「技能実習」にはこういった問題が多いのか

様々な原因がありますが、まず共通して根底にあるのは受入企業の「技能実習」に対する認識に相違があるからです。

技能実習生は本来「労働力」として利用してはならないとされています。
技能実習制度の趣旨は日本の技能や技術を技能実習生を通じて開発途上国等へ移転し国際協力に寄与することです。

しかし、現実は多くの受入企業で技能実習生=労働力となっている実態があります。
当然、技能を修得させるためには現場の仕事を通じて行う必要があるため、彼らが労働力としてみなされるのも致し方ないのもまた事実です。

そのため、この認識の相違は現実的にはある程度許容するしかありません。

本当の問題は次に説明します。

技能実習の受入れパターン

前提知識として技能実習生の受入れには次の2つのパターンがあります。

  1. 企業単独型
  2. 団体監理型

それぞれザックリと違いを説明するとこんな感じです。

1.企業単独型
受入企業が単独で技能実習生を受け入れて彼らのいろいろな世話や面倒をみる形

2.団体監理型
「監理団体」という第三者が技能実習生を受入企業に紹介して、両者(受入企業と実習生)のいろいろな面倒をみる形

1は単独で実習生を受け入れることが可能、言い換えれば単独でイロイロまかなえるということです。つまり、1はノウハウや資力をもつ比較的大きな企業がとる形になります。
2は、監理団体という国から認可された非営利組織が技能実習法の制度を遵守しつつ、外国の送出機関と技能実習生と人手不足にあえぐ中小企業の3者間のパイプ役となっていろいろと動く形となります。
現在の日本の技能実習制度では9割がこの形です。



この2つの受入れパターンを見ていただいてどちらに問題が多そうでしょうか?

2の方は一見、監理団体という非営利団体が中立の立場で両者(実習生と受入企業)を監督してくれて1よりも安心な気がします。
実際、法律もその監理団体の立場を重要視して実習生に対する公正で適正な保護を担うよう求めています。

しかし、現実は違います。

問題の原因となるほとんどは本国の送出機関が悪質なものばかりだったことと、監理団体による実習生の管理体制が杜撰であることです。
特に現地の送出機関には悪質なブローカーと遜色ない組織も多く「日本にくるために本国で数年分の年収の借金をする」といったことを聞いたこともあると思います。
また監理団体の規模にもよりますが、多くの監理団体にとって受入企業は「お客様」であるものの、年々増える技能実習生の一人一人をケアできるほど体制が整っていません。したがって受入企業と実習生の間にトラブルが起きたり、実習生に何か問題が生じた場合、最後のセーフティーネットになるはずの監理団体の仕組みが正常に機能していないため、様々な問題は起きるべくして起きているというのが現状です。

技能実習制度には上述したように「送出機関」「実習生」「受入機関」「監理団体」の計4者の登場人物がいます。

言うまでもなく犯罪行為は到底容認できるものでは無く、事情はどうあれ犯人は厳正な処分を受けて二度と来日できないようにしても良いんじゃないかと個人的にも思います。
しかし、一部の報道を受けて「技能実習生は犯罪ばかり犯す」「技能実習制度なんかいらない」というのも誤った極端な物の見方です。なんでもそうですが問題の本質は客観的にみることが必要だと思います。

繰り返しですが現在日本で働く技能実習生は約41万人です。

今後ますます超少子高齢化が進む日本にとって、純粋なこの労働人口数は非常に大きな力です。
かつて世界第二位の経済大国といわれた日本も今や5~7位をウロウロしており、途上国の若者から見て果たして日本は一昔前のように輝いて見えているのでしょうか。
5年前のベトナム労働省資料によると、月額賃金では台湾650ドル、韓国1000ドル、日本1400ドルと日本が魅力的になっていたようですが、最近ではカナダや韓国を実習先として選ぶベトナム人も多いそうです。

というところで、「技能実習」のざっくり解説はこのぐらいにします。

特定技能1号と2号の違いや受入までの流れ等、じっくり解説はコチラ

次は「文化活動」の在留資格をご紹介します。

最期までお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願い致します。

 

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この記事を書いた人

SHINGO ITO
SHINGO ITO行政書士Office ITO 代表
IT業界で15年目リストラに遭遇し、行政書士資格を取得。
2016年,行政書士Office ITOを開設し、外国人ビザ申請に特化。
銀座を拠点に就労ビザ・配偶者ビザ・永住ビザなど実績10年。
趣味はおいしいパスタ料理(自称)と断捨離。家は小遣い制。
[ 所属団体 ]
東京行政書士会(会員番号 第11086号)
日本行政書士会連合会(登録番号 第16081519号)
[ 資格 ]
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Certified Immigration Procedures Agent(入管申請取次届出行政書士)

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