「研修」とは

「研修」ビザは、開発途上国等の青壮年を一定期間受け入れて技能を修得してもらい、その青壮年が帰国後に修得した技能を活用することで、母国発展に貢献する「人づくり」を目的としています。
この目的は「技能実習」と同一とされています。
※青壮年…青年と壮年との総称。16~50歳くらいの人。

「研修」の在留期間

「研修」の在留期間は1年、6月または3月のいずれかが付与されます。

「研修」の具体例

「研修」の具体例は次のとおりです。

  • 実務作業を伴わない非実務のみの研修
  • 公的機関が実施する研修、公的な機関等の資金によって運営される事業として行われる研修
  • 日本の公私の機関により受け入れられて行う技能等の修得をする活動

入管HP「在留資格一覧表」はこちら

「研修」の活動範囲

「研修」は入管法で次のように定義されてれています。

日本の公私の機関により受け入れられて行う技能等※1の修得をする活動
ただし、「技能実習1号」及び「留学」の在留資格に該当する活動を除く

入管法別表第1の4の表「研修」より

用語の説明

※1.「技能等」とは

一口に技能といってもそれは各業種・各分野それぞれの技能が対象となり得るため、具体的な定義はされていません。
ただ、「同一の作業の反復のみによって修得できるものは技能とはいえない」とされています。例えば、同じ作業を繰り返し行うだけの内容であったり、作業範囲が広くても手足などを動かすのみで完結する内容である場合は、ここでの「技能等」には該当しないものとなります。

「研修」の要件

在留資格「研修」の目的は「技能実習」と同じであるため、両者に求められる基準も当然似たものがあります。
「研修」の基準は1~20号までありますが、ここでは重要な1~9号をピックアップします。
※「研修」の上陸基準省令1~20号より

ちなみに10~20号は、受入機関の関係者に入管法や労働法違反があった場合、改善措置や一定期間受入れが不可となることを定めた基準です。

1号

申請人が修得しようとする技能等が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。

 1号の解説

用語解説の繰り返しとなりますが、「同一の作業の反復のみによって修得できるもの」はわざわざ日本で習得する必要性が低く、この在留資格の趣旨である“開発途上国への技術移転”には当たりません。
そのため「同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと」が1号基準の内容です。

 

2号

申請人が18才以上であり、かつ、国籍又は住所を有する国に帰国後、日本において修得した技能等を要する業務に従事することが予定されていること。

 2号の解説

年齢要件と帰国後に修得した技能等を必要とする業務に従事することが求められています。
ただし、帰国後の予定までも管理することは事実上不可能であるし、個々の事情も異なるので一律に一定期間内に修得した技能を要する仕事に就くことまでは求められていません。

 

3号

申請人が住所を有する地域において修得することが不可能、または困難である技能等を修得しようとすること。

 3号の解説

そもそも自国で習得することが可能な技能であれば、日本で研修を受ける必要がありません。
そのため、特段の事情がない限り申請人の国では修得不可能な技能等が研修の内容であることが求められます。

 

4号

申請人が受けようとする研修が研修生受入機関の常勤の職員で修得しようとする技能等について5年以上の経験を有する研修指導員の指導の下に行われること。

 4号の解説

技能等を研修生が修得するためには当然、受入機関に十分な指導体制が整えられていることが求められます。

 

5号

申請人が日本において受けようとする研修の中に実務研修が含まれている場合は、次のいずれか(A~G)に該当していること。

  1. 申請人が、日本の国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が自ら実施する研修を受ける場合
  2. 申請人が独立行政法人国際観光振興機構の事業として行われる研修を受ける場合
  3. 申請人が独立行政法人国際協力機構の事業として行われる研修を受ける場合
  4. 申請人が独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油開発技術センターの事業として行われる研修を受ける場合
  5. 申請人が国際機関の事業として行われる研修を受ける場合
  6. A~Dに掲げるもののほか、申請人が日本の国、地方公共団体、または日本の法律により直接に設立された法人若しくは日本の特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人若しくは独立行政法人の資金により主として運営される事業として行われる研修を受ける場合で受入れ機関が次のいずれにも(a~e)該当するとき。
    1. 研修生用の宿泊施設を確保していること。
      研修の実施についてあっせん機関が宿泊施設を確保していることを含む。
    2. 研修生用の研修施設を確保していること。
    3. 生活指導員を置いていること。
    4. 申請人が研修中に死亡し、負傷し、又は疾病に罹患した場合における保険(労働者災害補償保険を除く。)への加入その他の保障措置を講じていること
      研修の実施についてあっせん機関が当該保障措置を講じていることを含む。
    5. 研修施設について労働安全衛生法の規定する安全衛生上必要な措置に準じた措置を講じていること。
  7. 申請人が外国の国若しくは地方公共団体、またはこれらに準ずる機関の常勤の職員である場合で受入れ機関がFのa~dまでのいずれにも該当するとき。
  8. 申請人が外国の国、または地方公共団体の指名に基づき、日本の国の援助及び指導を受けて行う研修を受ける場合で次のいずれにも該当するとき。
    1. 申請人が外国の住所を有する地域において技能等を広く普及する業務に従事していること。
    2. 受入れ機関がFのa~dまでのいずれにも該当すること。

 5号の解説

5号は特に重要で次のケース以外は「実務研修」を認めない旨が規定されています。

  • 公的機関の事業として行われる研修
  • 公的機関の資金により主として運営される事業として行われる研修
  • 外国の公的機関の常勤職員のような研修
  • 外国の国・地方公共団体の指名に基づき日本国の援助・指導を受けて行う研修

「実務研修」とは、商品の生産若しくは販売をする業務、または対価を得て役務の提供を行う業務に従事することにより技能等を修得する研修のことをいい、商品の生産業務に関するものにあっては生産機器の操作に係る実習(商品を生産する場所とあらかじめ区分された場所、または商品を生産する時間とあらかじめ区分された時間において行われるものを除く。)を含みます。

では、実務研修とそうでない研修(非実務研修)の違いは何かというと、必ずしも講義形式である座学か否かによって決まるものでは無く「研修生の行う作業が企業などの商品の生産、または有償の役務提供の過程の一部を構成するかどうか」によって決まります。

非実務研修を例にすると、工場の敷地内において生産ラインなどとは明確に区分された別棟にて行われる研修や、生産ラインなどがある敷地内で研修をする場合でも実際に取引先に納品される商品を生産する区域とは明確に区分されている場所等に設置された模擬ラインを使用して試作品を製造する場合は非実務研修となります。
また、顧客を相手としない「模擬訓練」や受入機関の職員の作業を視察しながら指導員から指導を受ける「見学」も非実務研修となります。

 

6号

受入れ機関が、研修生に対し研修を継続することが不可能となる事由が生じた場合は、直ちに、地方入国管理局に当該事実及び対応策を報告することとされていること。

 6号の解説

「研修を継続することが不可能となる事由」には、研修生の失踪や疾病、受入れ機関の倒産、その他不正行為などといった受入れ機関と研修生との間の様々な問題が該当します。

 

7号

受入れ機関、またはあっせん機関が研修生の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置を講じていること。

 7号の解説

研修生の帰国に支障をきたさないように、受入機関 or あっせん機関が帰国旅費の全額を負担することが必要とされています。
なお、もし受入機関が倒産して研修の継続が困難となった場合でも、研修生の帰国旅費を負担できるように受入機関は研修生の受入当初から当帰国旅費を確保することが求められます。

 

8号

受入れ機関が研修の実施状況に係る文書を作成し、研修を実施する事業所に備え付け、当該研修の終了の日から1年以上保存することとされていること。

 8号の解説

研修の実施状況を把握するため、研修日誌・研修時間・研修手当・研修内容などについて記録した文書を作成しておくとともに、その研修が終了した日から最低1年間は保存しておくことが求められています。

 

9号

申請人が日本において受けようとする研修の中に実務研修が含まれている場合は当該実務研修を受ける時間(2以上の受入れ機関が申請人に対して実務研修を実施する場合にあっては、これらの機関が実施する実務研修を受ける時間を合計した時間)が、日本において研修を受ける時間全体の3分の2以下であること。
ただし、申請人が、次のいずれか(A、B)に該当し、かつ、実務研修の時間が日本において研修を受ける時間全体の4分の3以下であるとき、または次のいずれにも該当し、かつ、実務研修の時間が日本において研修を受ける時間全体の5分の4以下であるときは、この限りでない。

  1. 申請人が、日本において当該申請に係る実務研修を4月以上行うことが予定されている場合
  2. 申請人が、過去6月以内に外国の公的機関、または教育機関が申請人の日本において受けようとする研修に資する目的で日本外において実施した当該研修と直接に関係のある研修(実務研修を除く。)で、1月以上の期間を有し、かつ、160時間以上の課程を有するもの(受入れ機関においてその内容が本邦における研修と同等以上であることを確認したものに限る。)を受けた場合

 9号の解説

実務研修が含まれている場合の要件です。実務研修がある場合には結果的に労働力の提供という効果をもたらすため、外見的には就労活動と似てしまいます。
従って、実務研修の割合に時間制限が設定されています。

「研修」の必要書類

「研修」の豆知識

「技能実習」との違い

「研修」と「技能実習」の制度趣旨は同じですが、違いは表のとおりです。

「研修」 日本の受入機関との雇用契約に基づかずに、実務を伴わない技能等を修得する活動
「技能実習」 日本の受入機関との間の雇用契約に基づいて、当受入機関の実務を行いつつ技能等を修得する活動

※ 両者の制度趣旨…開発途上国へ技術移転を行い、国際協力の一環として経済発展へ貢献すること。

実務作業の有無が大きな違いです。
「研修」は基本的に実務作業を含まない座学などの非実務のみの研修が該当します。

他の在留資格への変更は不可

「研修」を終えた外国人は、帰国後すぐに修得した技能等を活かした活動を行うことが求められるため、基本的には「研修」から他の在留資格に変更することは認められていません。
研修をした受入機関で就労することも不可です。

ただ、例外的に変更が認められるケースとして、日本人と結婚した場合や日本で在留する外国人と結婚した場合などは変更が認められる可能性があります。

資格外活動も不可

研修生は予定がキッチリと組まれており、研修に専念する体制が整えられていることが前提です。
生活費については、受入機関が研修手当として一定の金銭を支給することが認められています。従って、「研修」ではアルバイトをすることも認められていません。

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