「永住者」ビザとは

「永住者」ビザは日本に無期限で在留することができる在留資格です。
さらに就労範囲に制限がなくなるため日本人と同様、あらゆる仕事・職種に就けることも大きな特徴の一つです。
したがって、永住者になるとビザ変更や更新の手続から解放され、日本で永続的に安定して住むことができる言わば最強のビザです。
●入管HP「在留資格一覧表」

「永住者」になるための条件

肝心な「永住者」になるための要件は1~3号の3つだけですが、それぞれに若干細かい規定が設けられています。

順に解説していきます。

1号 素行善良要件

素行善良要件とは、日本での生活は普段から法律を守って暮らしているかどうか、ということです。
具体的には次のa~cのどれかに該当すると素行が善良でないと判断されます。

  1. 日本国の法令に違反して、懲役、禁固、罰金に処せられたことがある者
  2. 少年法による保護処分が継続中の者
  3. 日常生活、または社会生活において違法行為または風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者
1号の解説

  • aについて
    刑罰の言い渡しを受けた場合であっても、執行猶予の言い渡しを取り消されることなく当執行猶予期間を経過し、その後さらに5年を経過している場合は、aに該当しないものとして扱われます。
  • cについて
    cはどういう意味かというと、aのような比較的重い罪は受けていないものの、軽い法令違反を繰り返し行ってしまう人がこれに該当します。
    例えば、ちょっとしたスピード違反、駐車禁止違反などの道路交通法違反を短い期間に何回も起こしたり、有罪とならないまでも万引きの前歴が何度もある場合などです。

※ なお、この1号要件は申請者が次の場合には要求されません。
・日本人の配偶者または子
・永住者の配偶者または子
・特別永住者の配偶者または子

2号 独立生計要件

独立生計要件とは、生活保護などの公共の負担となっておらず、仕事をしているか、または仕事をしている配偶者などの扶養を受け、資産またはその本人のもつスキルから将来において安定して生活が送れるかどうか、ということです。

2号の解説

  • 独立生計要件は必ずしも申請人が具備している必要はありません。例えば、申請人に配偶者がいて世帯単位で見た場合に安定した生活を続けられる収入があれば当要件を満たすものとして扱われます。
  • 申請人が「経営・管理」から「永住者」申請をする場合、その経営する会社も審査対象となります。安定性と継続性という観点から会社に欠損が2期以上続いていると問題があります。
  • 申請人が就労系のビザから「永住者」申請をする場合、年収が300万円未満だと総合的な判断によるものの不許可となる可能性があります。

※ 2号の独立生計要件も申請者が次の場合には要求されません。
・日本人の配偶者または子
・永住者の配偶者または子
・特別永住者の配偶者または子

3号 国益適合要件

この3号が最も重要です。
国益適合要件とは、申請人の永住が日本国の利益になるかどうかということです。
具体的には次の4つ全てを満たす必要があります。

  1. 原則として引き続き10年以上日本に在留しており、かつ、この期間のうち、就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留していること。
  2. 納税義務、社会保険への加入及び保険料の納付義務等の公的義務を履行していることを含め、法令を遵守していること。
  3. 現に有している在留資格の在留期間が最長であること。
  4. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
3号の解説

A.「原則引き続き10年以上日本に在留、かつ、この期間のうち、就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留」について
要は引き続き10年以上は日本に住んでその内、引き続き5年以上は就労資格か居住資格で在留してくださいね。って意味ですが、永住を希望する多くの外国人にとって最初の壁になる要件です。

  • 「就労資格」とは、「教授」、「経営・管理」、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」などのビザのこと。
  • 「居住資格」とは、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」ビザのこと。
  • 「引き続き」とは、基本的には直近期間の「途切れることなく、継続していること」が求められます。

    例えば、
    • 2年間専門学校に通った留学生が「留学」ビザ⇒「技術・人文知識・国際業務」に変更し、会社に就職後8年勤務した場合 ⇒ OK
    • 「留学」ビザ(2年)⇒「技術・人文知識・国際業務」ビザ(3年)⇒再度「留学」ビザに変更(2年)⇒「技術・人文知識・国際業務」ビザ(3年) ⇒ NG
      ※直近期間の「引き続き5年」を満たしていないため

この「引き続き10年在留」という要件は厳しいため、一定の条件で緩和措置があります。

イ、「納税義務、社会保険への加入・・・略・・・公的的義務の履行、法令を遵守」について
ここはそのままの意味です。税金や社会保険料は払う義務があります。

ウ、「現に有している在留資格の在留期間が最長」について
在留期間には、5年・3年・1年といったようにありますが、本来は「5年」の在留期間が付与されている必要があるということ。
ただし、当面の間は在留期間「3年」が与えられていればOKです。

エ、「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと」について
具体的には、感染症一二類や指定感染症になっていたり、大麻・あへん・覚せい剤などの中毒者である場合は“公衆衛生上の観点から有害”と判断されます。

原則10年在留の緩和(7)

「永住者」になるための要件の3号のア

ア.原則として引き続き10年以上日本に在留しており、かつ、この期間のうち、就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留していること。

この点が多くの外国人にとって大きな壁となりやすいと解説しました。

そこでAについては次の1~7のような特例(緩和措置)があり、いずれかのケースに該当すれば10年という期間を大幅に短縮できます。
 例えば7に該当する場合は、僅か1年の在留期間で永住許可が認められます。

原則10年在留に関する緩和措置

  1. 日本人、永住者および特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。その実子等の場合は1年以上日本に継続して在留していること
  2. 定住者の在留資格で5年以上継続して日本に在留していること。
  3. 難民の認定を受けた場合、認定後5年以上継続して日本に在留していること。
  4. 外交、社会、経済、文化等の分野において日本への貢献があると認められる者で、5年以上日本に在留していること。
  5. 地域再生法5条16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において、「特定活動告示36号」または「37号」のいずれかに該当する活動を行い、当活動によって日本への貢献があると認められる者の場合、3年以上継続して日本に在留していること。
  6. 高度人材ポイント制のポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれか(a、b)に該当するもの
    1. 「高度人材外国人」(ポイント計算の結果、70点以上の点数を有すると認められて在留している者)として3年以上継続して日本に在留していること。
    2. 3年以上継続して日本に在留している者で、永住申請の日から3年前の時点を基準としてポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
  7. 高度人材ポイント制のポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれか(a、b)に該当するもの
    1. 「高度人材外国人」(ポイント計算の結果、70点以上の点数を有すると認められて在留している者)として1年以上継続して日本に在留していること。
    2. 1年以上継続して日本に在留している者で、永住申請の日から1年前の時点を基準としてポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。

7については、意味が分かり辛いのでブログでも解説しています。
 高度人材ポイントを使った永住申請とは 

「永住者」の必要書類

「永住者」になるための必要書類は、今のビザ・身分等に応じて次の4パターン

  • 申請人が日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者、または、その実子等である場合(身分系) 永住許可の申請1
  • 申請人が「定住者」の在留資格である場合 永住許可の申請2
  • 申請人が就労関係の在留資格(「技・人・国」、「技能」など)及び「家族滞在」の在留資格である場合 永住許可の申請3
  • 申請人が“高度人材外国人”であるとして永住許可申請を行う場合 永住許可の申請4

永住許可申請書のサンプル  

「永住者」のメリット

「永住者」のメリットを整理すると次の5点です。

  • 在留期間が無期限。
  • 活動範囲に制限がなくなるため、日本人と同じように働くことが可能。
  • 社会生活の中で信用が上がり、住宅ローンを組みやすくなる。
  • 家族(永住者の配偶者や子供)が永住者になりやすい。
  • もし、退去強制となった場合でも法務大臣による在留の特別許可が得やすい。

  メリットの補足

  1. 無期限について
    在留期限は無期限ですが、7年に一度、在留カード自体の有効期間を更新をしなければなりません。
    パスポートも有効期限がありますよね。在留カードもそんな感じです。
    数年に一度なので忘れやすいかもしれませんが、手続を忘れると「永住者」である資格が取り消される可能性があります。
  2. 活動範囲に制限がなくなる点について
    永住者になると日本人と同じくどんな仕事でも働くことができます。就労ビザのように職種や仕事が変わってもビザ変更したり、転職したことを入管に届出をする必要もなくなります。
    ただし、当然ながら法律に違反することはできません。(ex,労基法に反する働き方、反社的な仕事、など)
  3. 住宅ローンの組みやすい点について
    あくまでも組みやすいという前提が整うだけで、年収や貯蓄額に見合わないローンは日本人だって組めません。ローンの審査は本人の年齢、対象の物件額、返済年数、頭金などによって決まります。
  4. 永住者の配偶者や子供が永住者になりやすい点について
    詳細は後述しますが、本来永住者になるための要件の一つに「引き続き10年以上日本に在留すること」という点がありますが、その10年が緩和されます。
  5. 在留特別許可が得やすい点について
    実際には日本にいる家族の有無などケースバイケースですが、他の一般的なビザで在留する外国人に比べれば在留特別許可が貰える可能性が上がるというだけです。

申請する場所

法定費用:8,000円(収入印紙で納付)
許可がでる際に必要

    結果が出るまでの審査期間

    申請してから結果がでるまで約8ヵ月~1年かかります。
    非常に長い時間がかかることと、審査中に入管から追加で資料要請が度々寄せられることが特徴です。

    「永住者」の申請ポイント

    • 在留期間の残り期間に注意
      永住申請をしても現在のビザ期間が伸長されることはありません。現在持っているビザの期間は更新申請する他ありません。
    • 在留中に長期出張や出国が多い場合は注意
      要件の中に「引き続き10年以上在留・・・」という点がありますが、長期出張や出国が多い場合には「引き続き」という要件を欠くおそれがあります。
      「引き続き」が切れるかどうかの目安は、1回の出国日数が3ヵ月以上かどうかです。つまり、1回の出国が3ヵ月以上となった場合はそれは「引き続き」とはみなされない可能性が高くなるということです。
      また、1回の出国は3ヵ月より短くても、1年のうちで短期の出国を繰り返し行い合計150日以上日本を出国している場合も「引き続き」とみなされない可能性が高いです。
      なお、これらの数字は入管法で決まっている訳ではなく、あくまでも目安であることと、実務的には年間の出国期間も重要ですが、それだけで不許可になる訳ではなく、長期出国の理由、過去の出国状況、家族状況、日本での資産状況などといったことが総合的に考慮して判断される点に注意が必要です。

    身元保証人・身元保証書とは

    永住許可申請の場合、身元保証人が必要です。
    身元保証人とは、申請人に万が一のことが発生した場合、次の3つを保証する人のことを言います。

    1. 滞在費(万一の場合)
    2. 帰国旅費(万一の場合)
    3. 日本の法令を順守させるようサポート・アドバイス

    身元保証書とは、身元保証人が入管に対し、上記のことを私が責任をもちますよ、ということを誓約した文書のことです。

    身元保証人になれるのは

    身元保証人になることができるのはある程度決まっています。

    • 永住申請の場合・・・日本に居住する日本人もしくは永住者
    • 「日本人の配偶者等」に関する申請の場合・・・日本に居住する配偶者(日本人)もしくは日本人の親
    • 「永住者の配偶者等」の場合・・・永住者の配偶者もしくは永住者の親

    身元保証人に求められる書類は?

    身元保証人に求められる書類は次のとおり

    1. 身元保証書(日本語版)【PDF】身元保証書(英語版)【PDF】
    2. 身元保証人の職業を証明する資料
      (1)会社員は在職証明書、役員の方は在職証明書と会社の登記簿謄本等
      (2)自営業者等は確定申告書の写し、営業許可証の写し(有る場合)等
    3. 身元保証人の直近(過去1年分)の所得を証明する資料
      (例:住民税の課税証明書、源泉徴収票の写し等)
    4. 住民票
      ※ 個人番号(マイナンバー)や住民票コードは省略

    「身元保証書」サンプル

    身元保証書には身元保証人による押印や署名が必要です。

    ※今(2021,12現在)は印鑑は不要

    身元保証人の法的責任は?

    「保証人」という表現から連帯保証人のように、もし本人に何かあった場合には連帯して責任を追求されるのでは?、と少し怖いイメージがあるかもしれません。しかし、そんな心配はなく、もし、その外国人が日本で犯罪を犯しても身元保証人が罪を問われる様なことは一切ありません。
    さらに言うと、仮に身元保証人が上記3つの責任を果たせなかった場合であっても、道義的な責任が問われるのみで法的な罪にはなりません。

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