特定技能の制度に関する基本方針にのっとって、人材確保が困難な分野として14の特定産業分野 が定められました。
今回は、その14分野の中のひとつ農業分野について。

農業分野の運用方針

特定技能外国人を農業分野へ受け入れる趣旨と目的

深刻化する農業分野の人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした現場に即戦力として就労する外国人を受け入れることで、この分野の存続・発展を図り、日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することが挙げられています。

「農は国の基」であり、農業振興が国の基本的施策として極めて重要であることは古今東西変わらないでしょう。

農業分野の人手不足の状況

農業分野における雇用労働力は、現時点で約7万人不足していて、平成29年の農業分野の有効求人倍率は1.94倍(農耕作業員1.71倍、養畜作業員2.80倍)となっていて、深刻な人手不足の状況にあるといえます。

有効求人倍率とは
簡単にいうと、1より大きくなると仕事の数の方が多く、働き手が足りない状況。
1を切ると、求職者の方が多く、仕事探しが困難な状況。

農業分野への人材確保の必要性

農業分野の有効求人倍率の数値だけをみると、他の人材確保が困難な分野と比べ低い印象がありますが、これは数値だけでは見えてこない農業就業者の世代間バランスに注意しなければなりません。

どういう事かというと、現時点での農業従事者の68%が65歳以上、49歳以下は僅か11%と、およそ農業に従事する人の実に7割が高齢者となっていることから、単なる有効求人倍率の数値だけでは測れない内部の世代間バランスを理解する必要があります。
さらに、農業分野では地域的な特性も強く農村地域においては、加速的に人口減少が進み、高齢化率は都市部の24%であるのに対し、農村地域は32%とおよそ3人に1人が高齢者となっており、この「若年者 < 高齢者」という割合が今後さらに加速することは容易に想像されます。

以上のことから農業就業者の減少・高齢化を背景とした労働力需要の増加に鑑みると、これらの要因に対しての人手不足が早急に改善できる見通しは立っていないといえます。
国家の基礎でもある「農」を持続的に発展させるためには、一定の専門性・技能をもった即戦力の外国人を受け入れて、農業分野を成長産業としていくことが日本の経済、特に地方創生のためにも必要不可欠であるといえます。

受入れ見込数

農業分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大3万6,500人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用するとされています。

人手不足の数だけにフォーカスすれば、向こう5年間で13万人が足りないとされている中、今回の受入れでは、実際の労働効率化なども考慮して5年間で最大3万6,500人を受け入れるに留まるとされているので、決して過大な受け入れとはなっていないといえます。

見込み数を超えそうな場合は

懸念される部分の一つですが、もしこの分野への受け入れ見込み数を超える状況となった場合は、入管法の規定により在留資格認定証明書の交付の停止措置が取られる予定です。
そして同規定には停止措置がとられても、再び人材確保の必要性が生じた場合には、受け入れ再開の措置がとられることも定められています。

農業分野に求められる人材基準

農業分野において特定技能として受け入れられる外国人には、次の技能試験と日本語試験に合格することが求められます。

また、農業分野の第2号技能実習を修了した者も必要な技能水準と日本語能力水準を満たしているものとして取り扱うとされています。

1.技能水準(試験区分)

ア.「農業技能測定試験(仮称)(耕種農業全般)」
イ.「農業技能測定試験(仮称)(畜産農業全般)」

2.日本語能力水準

「日本語能力判定テスト(仮称)」

又は

「日本語能力試験(N4以上)」

その他、農業分野の運用方針に関する重要事項

1号特定技能外国人が従事する業務

1号特定技能外国人が従事する業務区分は、上記の試験区分に対応し、それぞれ以下の区分に掲げる業務とする。

ア.耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)

イ.畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

特定技能所属機関(所属機関)に対して特に課す条件
  1. 直接雇用形態の場合、特定技能所属機関となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験があること。
  2. 労働者派遣形態の場合、次の要件を満たすこと。
    (ア)特定技能所属機関となる労働者派遣事業者は、農業現場の実情を把握しており特定技能外国人の受入れを適正かつ確実に遂行するために必要な能力を有していること。
    (イ)外国人材の派遣先となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者又は派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とする者であること。
  3. 特定技能所属機関は、「農業特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。) の構成員になること。
  4. 特定技能所属機関及び派遣先事業者は、協議会に対し必要な協力を行うこと。
  5. 特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会に対し必要な協力を行う登録支援機関に委託すること。
特定技能外国人の雇用形態

<雇用形態>
農業分野の事業者を特定技能所属機関とする直接雇用形態及び労働者派遣事業者を特定技能所属機関として外国人材を農業分野の事業者に派遣する労働者派遣形態とする。

<労働者派遣形態により受け入れる必要性>
農業分野においては、以下の理由から事業者による直接雇用形態に加えて、労働者派遣形態によって特定技能外国人を受け入れることが不可欠である。

  1. 冬場は農作業ができないなど、季節による作業の繁閑がある
  2. 同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なるといった特性があり、農繁期の労働力の確保や複数の産地間での労働力の融通といった農業現場のニーズに対応する必要がある
治安への影響を踏まえて講じる措置

農林水産省は、基本方針を踏まえつつ、治安上の問題となりそうな事項を把握するよう努め関係機関と適切に共有していくものとする。
また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがある場合は、基本方針を踏まえつつ、厚労省と関係機関が共同して所要の検討を行い、運用方針の変更を含め、必要な措置を講じるものとする。

特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中しないよう必要な措置を講じる

以上です。

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About the author

SHINGO ITO
SHINGO ITO
・Certified Administrative Procedures Specialist(行政書士)
・Immigration lawyer(入国管理局申請取次届出)
・Certified Skilled Worker of Financial Planning(2級FP技能士)
・Personal Information Protection Professional(個人情報保護士)
IT業界で10年間コーディネーターとして幅広く業務を担当。
2016年これまでに得た経験を活かすため行政書士に転身。
その後1年間の下積みを経て行政書士伊藤真吾事務所を開設。
趣味は、深夜の一人映画館と断捨離とバイク。家は小遣い制。
【Affiliation】
日本行政書士会連合会 登録番号 第16081519号
東京都行政書士会   会員番号 第11086号
【Other qualifications】
調理師免許
大型自動車免許
中型自動二輪免許

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